法律は女性を守らない 正当防衛法の矛盾

2020年 米国アイオワ州で男が刺殺され、当時15歳だった女性が殺人容疑で逮捕されました。女性は誘拐され、男から暴行を受けた末での犯行でしたが、正当防衛は認められませんでした。

今年9月、アイオワ州裁判所は女性を観察処分とし、加えて $150,000 の損害賠償を男の遺族に支払うよう命令を下しました。女性は故意による傷害ならびに殺人の罪を認めており、それぞれ10年の刑が決まっています。観察期間中に違反行為があった場合には、最長20年の禁固刑が女性に科せられることになります。

女性は現在17歳。家出中に別の男から誘拐され、複数の男を相手に売春行為を強要されていました。殺害した男からは数週間に渡り暴行を受けており、女性は男が眠っている隙にナイフで犯行に及びました。検察は女性が誘拐の被害者であることを認めましたが、睡眠中の犯行であることから、女性の身に差し迫る危険性はなかったとして、行為の正当性を否定しました。

日本でいう正当防衛はアメリカにもあります。英語では affirmative defense といいます。しかし今回の判例に見られるように、正当防衛が認められるには厳密な条件があります。アイオワ州は正当防衛法を採用していますが、法律が適用され得るのは「他者から深刻な危害を受ける危険性が差し迫っている状況下での、衝動的な犯行」に限られています。

正当防衛法とは別にセーフハーバー法(Safe Harbor Law)という法律があります。日本語では免責というのが意味的に近いでしょうか。セーフハーバー法は、特定の条件が満たされた場合に責任や罰則を猶予するもので、アメリカでは性的搾取を目的として誘拐・売買された未成年を罰則から守るためにも使われます。現在のところ、アイオワ州はセーフハーバー法を採用していません。

判例に対し、民間からは支援の動きが生まれています。かつて女性の担任教師だった人物が開設したクラウドファンディングでは、目標金額を大きく超えた今も寄付が寄せられています。集まった寄付金は、女性に科せられた賠償金の支払いと、これから女性が進学・就職を目指す際の支援などに充てられるとこのことです。

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