「受験の聖地」ラジャスタン州コタの過酷すぎる教育産業

インドは14億以上いる人口のうち65%が35歳以下という若い国です。若い人たちの間では高い学歴を求める人が増え、試験合格をかけて激しい競争が行われています。今年、難関工科大の入学を決める試験には1万人の定員に対し100万人以上の受験がありました。

インドで「受験の聖地」と呼ばれるのが、北部ラジャスタン州の南東に位置するコタという都市。同都市では1990年代前半から教育産業が活発化し、医学部・工学部受験を専門とする大手予備校にはインド全土からおよそ18万人の学生が通っています。

学んでいるのは主に17歳から20歳の青少年。毎日6時間の授業についていくため、多くの学生が早朝から自習を始めます。試験は2週間に1回、定期的に行われ、生徒は成績によってランク付けされます。

教育が一大産業として栄える一方、コタでは若年層の自殺が急増しています。今年コタで発生した自殺は27件。その大半が、成績の低迷によるストレスであると警察は発表しています。

これを受けて、ラジャスタン政府は10月に自殺防止を目的としたガイドラインを制定。大手予備校では精神科医やカウンセラーを常駐させる、24時間利用できるヘルプラインを設けるなどの試験体制を整えています。しかし、親から子への圧力を防ぐことはできません。

インドの家庭では、一族から医師やエンジニアを輩出することが名誉だと考えられています。親は子供に期待を寄せて教育に投資します。「受験の聖地」コタで暮らす青少年は、家族からの重圧を背負っています。彼らにとって試験に成功するか否かは、生きるか死ぬかの問題なのです。

一方、コタで働く精神科医はメンタルヘルスに対する偏見や誤解を指摘します。子供が鬱状態にあっても親が気付かない、世間体から精神科へ行くことができない等。精神科を訪れたとしても、その多くはスカーフやサングラスなどで顔を隠して来るといいます。特に女性の場合は結婚への影響から精神科への通院をためらう傾向が強いとのこと。

今年9月に亡くなった17歳の女子生徒は、命を絶つ前に何度も両親に家に帰りたいと相談していました。新聞のインタビューに対し女子生徒の父親は、多額の授業料を払っていることを理由に母親が娘の訴えを聞かなかったと話しています。

タイトルとURLをコピーしました