世界で急増 女性の刑務所収容の実状

ことし7月、人権機関、弁護士、作家らで構成された団体が刑務所における女性の処遇に関する嘆願書を公開しました。各国で急増する女性収容者の問題が国際的な会議で議論されないことに対する抗議です。

2022年にロンドン大学の研究者が行った調査によると、刑務所に収容されている女性は世界でおよそ740,000人。男女を合計した収容者のうち女性が占める割合は6.9%。2000年以降、女性収容者の数は約60%、男性収容者(22%)の増加数と比較して3倍の規模で増えています。

女性収容者が最も多い国

  1. 米国 211,375人
  2. 中国 145,000人(+拘留者数)
  3. ブラジル 42,694人
  4. ロシア 39,120人
  5. タイ 32,952人

人口に対する女性収容者の割合が最も多い国

人口100,000人ごとの人数

  1. 米国 64人
  2. タイ 47人
  3. エルサルバドル 42人
  4. トルクメニスタン 38人
  5. ブルネイ 36人

出典:H. Fair and R. Walmsley, World Female Imprisonment List fifth edition, Institute for Crime & Justice Policy Research (ICPR) at Birkbeck, University of London

2000年以降最も増加率が高かった国はカンボジア(9倍)、次いでエルサルバドル(7倍)。主に中南米と東南アジア諸国で顕著な増加が見られており、アジア・オセアニア地域では約2倍の増加。一方、ヨーロッパでは13%減少しています。

なぜ女性の収容が急激に増えたのか、はっきりとした理由はわかりません。しかし女性が犯罪行為に至る背景には精神・身体的な暴力と経済難が密接に関係していること、国や州によって女性に不利な司法制度があるといえます。

刑務所に収容される女性のうち英国は57%、シエラ・レオネは72%が配偶者や交際相手からの暴力を受けているとの統計があります。また、女性は社会的・経済的立場の弱さから麻薬犯罪に巻き込まれやすい傾向も。刑務所に収容される人のうち麻薬関係の罪で服役する人は男性が19%、女性が35%。また、妊娠の理由に関わらず中絶によって女性が禁固刑を受ける国もあるなど、法律による女性差別が近年加速しています。

犯罪を犯す女性はその人自身も何らかの被害者であり得ます。すでに脆弱な状況にある人を更なる危険に晒すことの危険性を議論していく必要があるでしょう。

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