ミケランジェロのダビデ像はポルノか

児童にダビデ像の写真を見せたことにより、米国フロリダ州の学校長が辞職に追い込まれる出来事がありました。

問題が起きた学校はキリスト教系の団体が運営するチャータースクール。11歳から12歳の生徒が所属する授業で美術教師がダビデ像の写真を使ったところ、子どもがポルノを見せられたとして3名の保護者が抗議。苦情を受け理事会は学校長に辞職または解雇のいずれかを選ぶように求め、学校長は辞職しました。

ダビデ像は16世紀イタリア・ルネサンス芸術を代表するミケランジェロの作品で、旧約聖書に登場する少年ダビデが巨人ゴリアテを目掛けて石を投てきしようとする場面を表した彫刻。ダビデは男性なので、もちろん陰毛と生殖器がついています。

学校運営者はウェブ媒体のインタビューに対し、作品そのものは問題視しておらず、学校長に対する処分は保護者への事前通知を怠ったためであると主張。学校では物議を醸し得る題材を授業で扱う際には事前にその旨を保護者へ伝えており、昨年同様の授業を行なった際に事前通知を受けた保護者から苦情はなかったとこのと。

フロリダ州は性に関して非常に保守的な政策を進めており、教育現場での規制は特に顕著です。今年3月には学校図書館の所蔵作品の検閲が行われ、児童に不適切と見なされた80作以上もの書籍が学校図書館から排除されました。また、州議会では10-11歳以下の児童に対する性教育を禁止する案を立法しようとしています。

今回の出来事に対し学校側はダビデ像そのものに問題はないとしていますが、公教育から性的な要素を排除する行為であり、その対象が芸術作品にも適用された結果といえます。この流れが強まれば、児童が美術館に行くことはおろか美術の教科書から多くの作品が消えることでしょう。

芸術は人を写す鏡です。誰かがポルノだと思えば、その人にとってはそれが真実。問題が作品の外にあることは、誰の目にも明らかではないでしょうか。

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