米国の中絶禁止 アリゾナ州で160年前の法律が復活

今週火曜日、米国アリゾナ州最高裁は約160年前に可決された法律を施行する判断を下した。アリゾナがまだ州になる前、1864年に定められた中絶禁止法である。

法律はほぼ全面的に中絶を禁止するもので、強姦によって妊娠した場合も中絶を認めない。唯一の例外は母体に生命の危険がある場合のみ。中絶に関わった者全員、つまり母体である女性や手術を行う医師などを処罰対象とし、違反者に対し2年から5年の禁固刑を科すことが定められている。

「最高裁の判断は道徳に反する。自由を侮辱するものだ。アリゾナ州が誕生する以前、南北戦争のさなか、女性が投票権を持っていなかった時代の法律を復活させたことはアリゾナ州の汚点として歴史に残るだろう」(アリゾナ州司法長官、Kris Mayes)

米国各州は近年急激に中絶を規制し始めている。米国は1973年のロー対ウェイド裁判(Roe vs Wade)によって中絶の権利が憲法で保障されてきた。前述のアリゾナ州の中絶禁止法もロー対ウェイド裁判以降は施行されていなかった。しかし2022年に共和党保守派が占める米国連邦裁判所がロー対ウェイド裁判の判断を覆し、中絶を認めるか否かを各州の判断に委ねた。そのため、共和党政権下の州を中心に米国全土で中絶規制の動きが広まっていったのである。

アリゾナ州では昨年、州知事が中絶関連の起訴権限を州司法長官に委任したばかりだった。州知事と州司法長官はともに民主党議員である。民主党議員は中絶禁止法を廃止するよう訴えていたが、上院・下院ともに民主党勢力によって阻止された。「(アリゾナ州最高裁の判断は)共和党議員の極端かつ危険な計略がもたらしたものだ。彼らは全力で女性の自由を奪おうとしている」と米国大統領が述べているように、米国全土に拡大する中絶の規制は政治的な意図によって動かされている。

現在米国ではアリゾナ州を含める15の州が中絶をほぼ全面的に禁止している。アリゾナ州の法律は妊娠15周目までの中絶は認めているが、この期間が変更される可能性はあるだろう。同様に妊娠15周目までの中絶を合法とするフロリダ州では、共和党保守派のロン・デサントス州知事が中絶を認める期間を妊娠6週目に短縮しようとしている。

今年11月に控えた大統領選に向けて、米国では憲法を改正して中絶の権利を保障するか否かが議論の的になるだろう。女性の運命を他人が決めるようなことは、決してあってはならない。

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