人口世界一のインド 気になる実情と社会のゆくえ

ことし4月、インドの人口が中国を抜いて世界最多になるという予測を国連が発表しました。推定される人口は14億2577万人超。人口統計で中国以外の国が首位となったのは1950年以来初めてのことです。

インドの人口は1950年に10億人を超えてから増加が続いており、2064年までには17億人に達することが予測されています。ただし、人口増加はインド全体で起こっているわけではありません。

今後数十年で増加が見込まれる人口のうち三分の一を占めているのが、インド北東部のビハールとウッタル・プラデーシュの二州。貧富の差が激しいインドでも特に貧しい農村地帯です。現在ウッタル・プラデーシュの人口はおよそ2億3500万人。ブラジルの総人口を上回る数です。

資料:インド各州の出生率

一方、主に南部の州では人口が減り始めています。特にインド南西のケララ州では少子高齢化が著しく、ケアホームでの一手不足など日本と同じような現象が起こっています。原因のひとつとして挙げられるのは教育水準の高さ。インドにおける識字率の平均が77.7%に対し、ケララ州は94.0%。優秀な若年層は他州や国外に仕事を求めます。2025年までにケララ州の人口は5人に1人が60歳以上になることが予測されています。

人口の増加にまつわる問題は大きくふたつあります。ひとつは爆発的な人口に対し教育と職が行き渡っていないこと。もうひとつは国政がさらに北部主体となる可能性。

現在インドは世界第5位の経済大国ですが、国内の労働年齢人口のうち就業しているのは半数以下。このうち、正式な職に就いている女性は20%。若年層の失業は特に深刻で、人口がさらに増えることでこの傾向がいっそう強まることが懸念されます。

人口の二極化が国内政治に与えうる影響も看過できません。インドの選挙区が2026年から国勢調査の結果をもとに改訂されるからです。区分けの主な基準となるのは人口の数。南部の政治家が高い教育と産児制限を推進したことにより南インドでは爆発的な人口増加を抑えることができました。しかしその結果によって、いま政治的不利になる危険に晒されているのです。

インドの勢いと成長には目を見張るものがあります。特に若い人の向上心は見ていて清々しい気持ちになるほど。彼らの思い描く未来が実現できる社会があることを切に願います。

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