NTR Sr. アーンドラ・プラデーシュとテルグ語映画への功績

NTR Sr.

祝!S.S.ラージャマウリ監督、NTR Jr.主演『ヤマドンガ』ムービープラス配信!

本ブログでは5月のJAIHO配信に続く6月のムービープラス配信を記念して、ブログ「ヤマドンガで蘇るNTR Sr.の勇姿を見よ」の続きを書きます。「だれ?」と思った方は前回のブログからご覧ください。

NTR Sr. が政治家として活動していた期間には、極左勢力の過激化をはじめとしてインド各地で混乱と闘争がありました。そういった話題は他に譲ることにして、今回は NTR Sr. が政治家として残した功績に焦点を当てたいと思います。

前回のブログで女性の権利拡大に尽力したことを取り上げました。インドには「Hindu Succession Act」という相続に関する法律があります。この法律によると出生と同時に相続権が認められていたのは男系家族のみで、女系家族が財産を相続する権利は親が死亡した場合に限られていました。

NTR Sr. 率いるテルグ・デサム党は1983年にこの法律の改正案を提出し、翌年可決。インドで初めて、アーンドラ・プラデーシュ州が男女に同等の相続権を与えました。なお、デリーの中央政権で同様の法律が導入されたのは約20年後の2005年です。

高等教育もまた NTR Sr. の大きな関心でした。テルグ・デサム党が州の政治を収めていた期間、アーンドラ・プラデーシュ州に設立された大学は4つ。うち3つは NTR Sr. の主導で進められたものです。また、インドで初めて高等教育審議会も設立しています。現在アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナ州で用いられている共通試験は NTR Sr. 政権下に導入されたものです。

NTR Sr. は自立した人間の育成には座学と同様に実地訓練が不可欠と考え、高校に職業訓練を取り入れる試みも行いました。理想としたのは6ヶ月の座学と6ヶ月の職業訓練からなる教育制度。NTR Sr. いわく「学生には社畜ではなく自立した人間になってほしい」。

映画界出身の NTR Sr. はインドで初めて学校教育に視聴覚教材を導入した立役者でもあります。高名な映画監督や作曲家を起用するなど映画関係者の協力による教材制作のほか、各学校にテレビとビデオプレイヤーの設置を進めました(当時そのような設備があったのはデリーだけ)。アーンドラ・プラデーシュ州の政権が変わってからは打ち切られてしまいましたが、NTR Sr. は有志とともにテルグ語教育のための委員会を設立、自らテルグ語の教科書を編纂するなどしてテルグ語の存続と発展を目指しました。

アーンドラ・プラデーシュ州はテルグ語話者が開拓した地域ですが、歴史的背景からウルドゥー語をはじめとするイスラム系言語が重視され、テルグ語は副次的な地位にあったとされています。今日ハイデラバードを中心としたテルグ語映画産業が栄えている背景には、テルグ語復興に尽力した NTR Sr. とテルグ・デサム党の存在が欠かせないと言えるでしょう。

参考文献

Ramash Kandula, Maverick Messiah: A Political Biography of N. T. Rama Rao, Ebury Press, 2021

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