アメリカ中絶禁止の余波 ミシシッピ州で13歳女児が出産

アメリカ南部ミシシッピ州で不審者に暴行された13歳の児童が妊娠、出産を余儀なくされる事件が起こりました。児童は自宅の庭で遊んでいたところを敷地内に侵入してきた男に襲われ、家の中にいた家族は暴行に気が付かなかったといいます。

ミシシッピ州を含むアメリカ南部では人口中絶が禁止されています。そのため手術を受けるには中絶を認めている他州へ行く必要があります。児童の家から最も近い病院はシカゴ、車でおよそ9時間の場所でした。旅費と手術費が高額になることから児童の母親は手術を断念。

2022年6月アメリカ連邦最高裁は人口中絶を合憲とする1973年の判決を覆し、中絶に関する規制を厳格化しました。現在アメリカでは14の州で人口中絶が禁止。州によって規制の詳細は異なります。ミシシッピ州とその近隣州では最も厳しい「トリガー法」を採用、いかなる状況でも人口中絶を禁止しています。

これらの州では原則として妊娠が暴行によるものだった場合、または母体に生命の危機がある場合は例外的に人口中絶を認めています。しかし手順が明確でないこと、報復などの恐れにより警察に届け出るケースが少ないこと(※)などから特例が適用される事案は稀。2022年の法改正以降ミシシッピ州で人口中絶が認められた例は2件のみ。

※ 2015年から2019年の調査によるとアメリカでは性的暴行の被害者3人に2人が警察に報告しない。届け出数は1,000件あたり310件、うち逮捕に至ったのは50件、有罪が認められたのは28件(出典1出典2)。

人口中絶を禁止している州には手術を行う医師や病院がないため、いずれにしても別の州に行く必要があります。

暴行を受けた児童の親族はSNS上で加害者と思われる人物を特定、警察に通報しましたが逮捕には至っていません。児童の出産が暴行によるものだということも公には認められず。

児童の母親は「ただ外で遊んでいただけでこんなことになってしまった。今もこれからも、痛みが消えることはない」と語っています。

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