インドの家事代行アプリ、労働者の6割強が嫌がらせを経験

家事代行の需要が高まっている。国際労働機関(ILO, International Labour Organization)が2021年に発表した調査によると、全世界で家事労働に従事する15歳以上の人口は7,600万人以上。このうち76.2%が女性であり、世界の女性労働者の約3分の1を占めている。需要と供給を支えるのは、労働者と顧客をマッチングするスマートフォン・アプリだ。

家事代行者を派遣するプラットフォームは過去10年で8倍に増えた。インドのデリー、ムンバイ、ベンガルールでサービスを展開するアプリ「Snabbit」は、注文から10分で労働者を自宅に派遣できると謳う。また、グルガオンに本社を持つ Urban Company 社はインド国内だけではなく、アラブ首長国連邦、シンガポール、サウジアラビアで同様の事業を行なっており、清掃や害虫駆除、マッサージなど幅広いサービスを提供している。

インドで家事代行をする層の大半は地方から移住してきた女性である。かつて移住者が行く先は工場だった。しかし厳しい監視下での長時間労働が敬遠されるようになり、より自由に、好きな時間に好きなだけ働ける家事代行業が人気になってきた。自宅で家族の世話などをしながら、空いた時間に家事代行を行う人も多いという。

働き方は変わっても、労働者の置かれる状況は大きく改善されていない。インド都市部で働く家事代行者を対象にした2018年の調査によると、全体の65%が顧客からストーカー行為や脅迫を受けたことがある、29%が性的いやがらせを受けたことがあるという。インドは職場での性的いやがらせを法律で禁じているが、非正規労働者はその対象ではない。

問題はアプリ運営会社、労働者、顧客のそれぞれにある。運営会社は労働者を守る仕組みを十分に作っていない。前述のアプリ「Snabbit」は労働者へのヘルプラインを設けているが必ずしも女性が対応するとは限らず、男性のスタッフからセクハラまがいの質問をされることもある。また、被害を伝えたとしても、ユーザーをブロックすることしかできない。労働者はこうした二次被害とも言うべき状況と、収入の損失や報復を恐れて声を上げない。従って、有害な顧客は運営から特定されずに搾取を続けることができる。言うまでもなく、守るべきは被害を受ける立場にある人たちであって、有利な立場を利用する人間ではない。

フードデリバリーの配達員からは盛んに抗議の声が上がるが、家事労働者の問題が表面化することは稀であると The Print 紙は指摘する。女性が声を上げるには、いく層にも重なって口を塞ぐ手を、退かさなければならない。根本的なことが変わらなければ、社会がいくら便利になっても同じ悪循環が続くだけだ。

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