イギリス 女性医師へのセクハラが止まらない

イギリスの医学雑誌「British Journal of Surgery」が医療現場でのセクハラに関する調査報告を発表しました。調査を行ったのはサリー大学、エクスター大学、The Working Party on Sexual Misconduct in Surgery(WPSMS) 。医師間における性的嫌がらせや性暴力を扱った調査としては初の試みです。

調査はオンラインの匿名回答式でイギリス国内の登録外科医を対象に行われました。回答者1,434名のうち女性は52%。

同じ職場で働く医師からのハラスメントに関して「性的嫌がらせを受けたことがある」と答えたのは男性が24%に対し女性が63%。「性暴力を受けたことがある」と答えたのは男性が7%に対し女性が30%でした。このうち、被害を報告したと答えたのは全体の16%のみ。「職場で医師間の性的嫌がらせや性暴力を目撃したことがある」と答えたのは男女ともに8割以上でした。

例は次のようなもの。研修一年目の女性医師が、監督者である男性医師から胸を触られるなどの行為を受けた。逃げようとしたところ腕を掴まれて怪我を負った。事件が起きたのはカンファレスに出席した夜で、男性医師は酒に酔っていた。その後女性は男性医師から口外しないよう脅迫を受ける。メンターに相談したところ、当該の医師がセクハラをすることは周知の事実だったことを知らされた。にも関わらず、女性にそのことを注意した者はいなかった。

1995年以降、イギリスでは毎年男性を上回る数の女性が医学部に進学しています(2022年・62%)。しかしながら、そのうち医師になる女性は少なく、外科研修医のうち女性が占める割合は35%、顧問外科医は15%。理由として医療現場では男性医師に権力が集中していること、年長の男性医師や監督者から新人女性医師へのセクハラが横行していること、被害を受けても報復などの恐れから公にできないことなどがあげられます。

また、保健機関や医療団体がこうしたセクハラの問題に対し消極的であることを調査報告書は指摘。第三者による独立した調査を徹底すること、性暴力に対する適切かつ明確な方針を定めること、性的な言動・行為を含む具体的な行動規範を定めることを改善策として提案しています。

資料:Breaking the Silence, Addressing Sexual Misconduct in Healthcare より

「過去5年間に同じ職場で働く医師から性的嫌がらせや性暴力などを受けたことがあるか」

  • 性的嫌がらせを受けたことがある…男性 24% / 女性 63%
  • 性暴力を受けたことがある…男性 7% / 女性 30%
  • 強姦されたことがある…男性 0.1% / 女性 0.8%

「過去5年間に職場で医師間の性的嫌がらせや性暴力などを見たことがあるか」

  • 性的嫌がらせを見たことがある…男性 81% / 女性 90%
  • 性暴力を見たことがある…男性 17% / 女性 34%
  • 強姦を見たことがある…男性 0.6% / 女性 1.9%
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